資治通鑑 巻218
令收隊,軍士不應。上使高力士問之,玄禮對曰:「國忠謀反,貴妃不宜供奉,願陛下割恩正法。」上曰:「朕當自處之。」入門,倚杖傾首而立。久之,京兆司
録韋諤前言曰:「今衆怒難犯,安危在晷刻,願陛下速決!」因叩頭流血。上曰:「貴妃常居深宮,安知國忠反謀?」高力士曰:「貴妃誠無罪,然將士已殺國忠,
而貴妃在陛下左右,豈敢自安!願陛下審思之,將士安則陛下安矣。」上乃命力士引貴妃於佛堂,縊殺之。輿尸ゥ驛庭,召玄禮等入視之。玄禮等乃免冑釋甲,頓首
請罪,上慰勞之,令曉諭軍士。玄禮等皆呼萬歳,再拜而出,於是始整部伍爲行計。
訳
近衛隊(このえたい)、軍士は応じなかった。上は、高力士を使わし之を問うた。玄礼が答えて言うには「国忠は謀反を起こしました。貴
妃は陛下のお供(そ
ば)にあってはなりません。陛下、恩愛(おんあい)を捨て正法(しょうほう)をお願いします。」上は言った「朕(ちん)自ら之を決しよう」と門に入った
が、杖に寄りかかり首を傾け、そうして立っていた。そのまましばらくして、京兆司録(きょうちょうしろく)の韋諤(いがく)が前に進み出て「今、衆の怒り
は犯(おか)し難(がた)く、安危(あんき)の時間は刻々と迫っています。陛下速やかにご決断願います!」と叩頭(こうとう)し血を流しながら言った。上
は言った「貴妃は常に深宮に居(お)る、国忠の謀反は何も知るまい?」高力士が言った「貴妃は誠に無罪です、然(しかれ)れども将士達はすでに国忠を殺し
ました、貴妃が陛下の左右にあれば、どうして安心していられるでしょうか!陛下は之をお考え願います、将士達の安心は即(すなわ)ち陛下の安心でありま
す。」上は乃(すなわ)ち力士に命じ貴妃を佛堂(ぶつどう)に引き入れ、之を縊殺(いさつ)した。屍(しかばね)を駅庭に運び、玄礼等を召(め)して之を
視(み)させた。玄礼等は冑(かぶと)を脱ぎ甲(よろい)を捨て、頓首(とんしゅ)し罪を請(こ)うた、上は之を慰労(いろう)し、軍士を諭(さと)すよ
うに命じた。玄礼等は皆万歳(ばんざい)を呼(さけ)び、再拝(さいはい)して立ち出(い)でた、是に於(お)いて始めて伍(ご)軍は整えられ行計(ぎょ
うけい)された。
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